援助専門職の奢(おご)り

小林美佳著『性犯罪被害にあうということ』(朝日新聞出版、2008)を読んで考えた。親のあり方、兄弟姉妹のあり方、友人のあり方、恋人のあり方、そして専門職のあり方について考えた。人はそれぞれの立場で最善と思う対応をしたのだと思うのであるが、親の外的コントロールに辟易したり、自分が援助専門職として対峙したときに、果たして自分は援助専門職にふさわしい振る舞いが出来ただろうかと考えさせられたりした。彼女は24歳の夏見知らぬ男二人にレイプされた。それも道を教えるという彼女の親切に対しての裏切り行為であった。そのときの彼女の気持ちは「人が人を裏切った瞬間がとても汚いものに思えて寂しいし哀しかった」(141p.)という言葉に表されている。彼女は何か所かカウンセリングを受ける場所を探したが、電話での受付や白衣を着たカウンセラーに、「つらかったですね」「分かりますよ」と嘘くさい言葉や笑顔を浮かべられて、逃げ帰った経験をしている。そして事件後2年以上経ってから、あるカウンセラーとめぐり会う。カウンセラーは察するにパーソン・センタード・アプローチの立場であろう。このカウンセラーに彼女は信頼を寄せることができるようになり、癒されてゆく。そして彼女は心理カウンセラーの専門学校に仕事をしながら通うようになる。最初の授業でどんなことに役立てたいかと聞かれ、「犯罪被害者、特に性犯罪被害者の危機介入やカウンセリングをしたい」とクラスで答える。これに対して講師は「相手に気持ちを押しつけていない?・・・今のあなたの答えは意識から出たもの。その奥にある無意識に気づいていない・・・」と講釈が続いた。彼女は「正直に答えたことを後悔し、怒りが込み上げてきた」と記している。援助専門職の奢りとも思えるやりとりである。それでも彼女は講師を尊敬できないままこの学校に1年通い通した。そして、自分の経験を生かす場はないものかと被害者支援都民センターに連絡をとってみる。20歳代の彼女にはスタッフになることもボランティアになる機会も与えられていないことを知る。自助グルーブについて聞いてみると、そのようなグループは存在しないとのこと。ボランティアも40歳以上でないと応募資格がないことを知る。しかし、実際には30歳以上の募集であり、別のところでは自助グループが存在していた。援助専門職の情報がアップデイトされていないことから来る不十分な情報である。20歳代の彼女はあえて応募してみるが何の連絡もなかった。電話をしてみると年齢対象外であるために「除外した」とのこと。どうして年齢制限があり20歳代ではボランティア活動の講習を受けられない理由も聞かされていない。実名で性犯罪被害者であることを話す彼女から、援助専門職についている私たちが学べることは多いと思う。奢ることなく謙虚に。

柿谷正期(日本選択理論心理学会会長)

日本選択理論心理学会ニュースレター50号より

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