地震や洪水などの被災地に住む友人と電話が繋がり安否を確認でき、ホッとする経験をした人は多いことだろう。電話が各家庭になかった時代を過ごした人々にとって、つながりに携帯やインターネットが使われる時代は想像もできなかった変化である。つながり方はいろいろあるが、医療現場でも治療を受けている人にどのような繋がりがあるか、その重要性が認識されてきている。 人とのつながりがある人とない人を比べると、健康寿命に違いがある。当然孤独な人よりもつながっている人の方が健康寿命は長い。54歳以上の人が配偶者をなくした場合、死亡率はそうでない人と比べて4倍、7倍、10倍も高いという研究結果を読んだこともある。高齢者になると新しいつながりは構築し難く、これまでのつながりも減少して行く。日本の少子高齢化は一層拍車をかけると思われる。 先日10年前に大学を卒業して社会人になっている元ゼミ生が二人で訪ねてきてくれた。昔、肺炎を患い入院していたときも、彼らが大勢で見舞いに来てくれたことを思い出した。お見舞いに来てくれる人がいると、死亡率は下がるという研究結果も知られている。6ヶ月以内で見ると心筋梗塞で入院している患者でお見舞いに来る人が2人以上いる人と、そうでない人との死亡率は26%と70%と大きな差がある。つながりのある人の健康寿命は長い。以前読んだものであるが、3つ以上の組織に属している人は認知症になる確率は、そうでない人と比べて低いようだ。私は教会とのつながりは58年、大磯ライオンズクラブの会員になって32年、日本選択理論心理学会とNPO日本リアリティセラピー協会は創立以来で30年以上。組織との関わりも大事にしたい。 グラッサー博士は私たちの組織がこれからも繁栄を続けるためには、メンタルヘルスに焦点を合わせる必要があると言われていた。メンタルヘルスの問題点は、まさに重要な人との人間関係が損なわれているか、重要な人間関係が欠損しているかにかかっている。良いつながりがある人のメンタルヘルスはそうでない人と比べても良好である。学会もNPOも良い人間関係を維持するために自分は何をするべきか、と自己評価をする会員によって支えられている。意見の違いを乗り越えてお互いが和合して共に成長する姿は美しい。これからもそうでありたい。 柿谷正期(日本選択理論心理学会のニュースレター81号より)