甲状腺機能低下症

精神科医師ニューボルドは、自らが低血糖症だと分かってから、自分がこれまで診た患者の中に同じような症状を訴えている人がいたと気づき、治療方法が変わったと告白していた。彼はまず低血糖症と甲状腺異常があるかの検査をする、と著書で述べていた。低血糖症のことはいろいろ書いてきたので、随分知られてきたという印象を得ているが、甲状腺機能の異常については、ここ40年近く気になっていた。恐らく甲状腺機能低下症の問題を抱えている人の多くが、精神科に行けばうつ病診断を受けるであろう。

最近になってRobert Thompson医師の著書The Calcium Lie IIを読んでわかったことがある。彼によると彼が絶大な信頼を寄せているTrace Elements, Inc.の毛髪分析を活用して、Ca(カルシューム)/K(カリューム)をはじめ7つの比を重視する。Ca/Kの比が4.2を超えていて、かつ基礎体温(朝起きがけの体温)が36.5℃以下であれば、甲状腺機能低下症の疑いがあるという。血液検査でTSH, FT3、FT4を検査すれば、TSHが高値であることが多い。日本ではTSHの参考値が0.390〜4.01となっているが、アメリカ内分泌学会は2011年に上限を3.0にすることを決定している。しかし、Thompson医師は、参考値は0.1〜1.0であるべきだと主張する。TSHの値が2.5である妊婦は、30%流産の危険が増すとしている。1.0増すごとに15%危険率が増すので、4.5の人は60%危険率が増大することになる。こうしたことは日本ではあまり知られていない。Thompson医師によると、甲状腺機能低下症には5種類あり、タイプ1〜5と分類している。タイプ1はホルモン補充が必要となるようだ。

Ca/Mg(マグネシューム)比は3.00〜11.00であるべきであるが、Caが多くてMgが少ないと、細胞の電気的機能が崩れて、細胞がMgを求めて副腎機能を抑えてMgをもっと要求し、結果としてNaとKが尿から排泄される。Na(ナトリューム)とKは胃酸産生には不可欠なので、消化に問題が起こり、たんぱく質を消化できずにアミノ酸を活用できなくなる。こうして神経伝達物質の産生が困難になる。このように甲状腺機能低下症とメンタルヘルスには大きな関係があることがわかる。

柿谷正期(日本選択理論心理学会会長)

日本選択理論心理学会 ニュースレター77号より

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