自己評価の適用

 私が大学教員であった頃、試験をするときに、自己評価を如何に評価システムに取り入れるかを模索した。記述式試験問題の回答欄の下に、自己評価欄を設け、出席、課題、グループ発表、読書レポート、試験、という幾つかの項目に対して、学生にA,B,C,Dの評価をつけてもらった。数字にすれば、4,3,2,1。自己評価を促す項目数は教科によって違うこともあるが、それらにはウェイトをつけた。出席20%、読書レポート30%、グループ発表20%、試験30%、というような具合だ。そして3.6~4.0をAとする。Bは2.6~3.5というような表を作っておき、事務室に提出するものは点数だけで、学生に通知されるのは点数ではなく判定(AかBかC,Dか)だった。「あのクラスでAをもらった」、「Bだった」というようなことになる。もう少しでAになるという状況では、学生のメーアドレスに「現状はB判定です。関連する何かを読んで提出することでA判定にすることも可能です。期限は◯月◯日14時、提出先は柿谷研究室です。」と配信する。「これを高校生の時からしてもらっていたら、、、」と感想を述べた学生もいた。自己評価を促される機会が少なかったということであろう。
 先日日本カウンセリング学会の年次大会に参加して気づいたことは、自己評価の概念があまり出てこなかった、ということだった。「自己理解」、「洞察」の中に自己評価は含まれるようであるが、洞察で行動は必ずしも変わらないことがある。選択理論を用いたカウンセリングであるリアリティセラピーでは、自己評価を促すことはカウンセリングの要である。
 「幸福な人は常に自分を評価している。一方、不幸な人は常に他人を評価している。」これはグラッサーの名言である。自分を評価するという自己評価こそが行動変容をもたらすものである。クォリティ(上質)は自己評価の積み重ねで生まれる。デミングの影響を受けた日本人は、早くから「上質」なものを作るのが一番安くつくと学んでいた。恐れのない環境で自己評価を繰り返しながら「上質」は育まれてきた。そしてMade in Japanの名声が世界に轟いた。産業界で成功するなら、教育界で成功しないはずはないと、グラッサーは教育改革に取り組んだ。結果を出すためには、子育てで、教育現場で、職場で、もっと自己評価の意義を理解し、実践する必要がありそうだ。  柿谷正期(日本選択理論心理学会会長)

日本選択理論心理学会ニュースレター第78号より

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