東京都新宿区歌舞伎町「駆け込み寺」

歌舞伎町で駆け込み寺を始めた人、玄秀盛(げん・ひでもり)。自分が白血病のウイルス保持者であることを献血で知り、そして発症後1年以内・・・と宣告された。人生の生きた証を持ちたいと、ビジネスを閉じて、歌舞伎町で駆け込み寺を開設した。
母親と呼ぶ人が4人、父親と呼ぶ人が4人、父が移動するたびに、また母が移動するたびに、ついて行くしかない少年時代だった。その人生は壮絶としか言いようがない。玄をモデルとしたドラマが渡辺謙主演で放映された。俳優渡辺謙は、玄を正直な人と称するが、私にはむしろ赤裸々な自己開示という印象が強い。ドキュメンタリーも放映され、鶴瓶とのトークショーにも出演した。ハヤカワ・ノンフィクション文庫『駆け込み寺の男、玄秀盛』(佐々涼子著)の帯には「新宿歌舞伎町で14年。いかなる悩みも解決してきたこの男、いったい何者?」と書かれている。私は玄にもらった3枚のDVD、書籍3冊すべてに目を通し玄の壮絶な生き様に触れた。
紹介者は私の教えていた大学のゼミ生・浅井夕佳里。彼女は臨床心理学を学ぶため、社会人入試で大学生となり、私のゼミ生となった。最近『ママと子どもで一緒にはじめる発達障がい“改善”ステップ』を出版した。ゼミで学んで知った以上放っておけないと発達障がい改善の道に入り、NPO「心和」を立ち上げた。浅井夕佳里は、以前駆け込み寺のボランティアとして会計を手伝ったことがあり、今回彼女から柿谷正期はゼミ担当教授だったと玄が聞き、9月23日急遽私が歌舞伎町の駆け込み寺を訪れることになった。駆け込み寺を出た後、駆け込み酒場“玄”に行った。この酒場は一般社団法人「再チャレンジ支援機構」の活動の一環でもあり、犯罪者の社会復帰の支援をしている。私が玄に手渡したコピー「選択理論と犯罪矯正に関する研究」(ニュースレター67号)は、選択理論が犯罪矯正にどれほど効果的かを示している。玄が求めていた情報があったに違いない。玄は刑務所と出所後の犯罪矯正に役立つプログラムを模索していた。これまでの玄の破天荒の生き方と、「たった一人のあなたを救う」と掲げた彼の「贖罪」の想いが、これまでの資金難をはじめとした諸問題を乗り越えさせ、多くの人を救ってきたのであろう。今後玄と選択理論はどのように繋がって行くのであろうか。(敬称略)
柿谷正期(日本選択理論心理学会会長)
日本選択理論心理学会ニュースレター75号より

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