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頭は体の一部です



柿谷正期

こころの病と言うときに、「こころ」は何を指しているのでしょうか。英語ではこころを表すことばとして、ハートやマイドを使いますが、マインドは頭に関係しています。「こころの一新によって自分を変えなさい」(ローマ12章2節)と言われているときに、こころ(ヌース)はマインドを表しています。こころをマインドと捉えるときに忘れてならないことは、脳細胞の働きにこころは深く係わっているということです。脳細胞の健康によって、こころの健康は左右されます。そして脳細胞は体と連携しながら機能しています。脳細胞が保護されている頭が体の一部であることを忘れてはなりません。

事例1

不安が強くて一人で外出できない主婦がいました。もうかれこれ10年、精神科医にかかって向精神薬を服薬していましたが、一向によくなりません。カウンセラーの助言もあって、血液検査をしてもらいました。たまたま産婦人科医が女性ホルモンも測定してくれたのです。医師がびっくりするほどの低値でした。さっそく医師が女性ホルモンの注射をしました。その日の夕方、食事作りをしているときに今までに経験したこともないほどルンルン気分で調理ができました。「こんなことで私は10年間も精神科にかかっていたのか。」彼女がそう思うのは無理もありません。不安感はホルモンのアンバランスからも起こるのです。この場合こころの病と言うべきでしょうか。それとも体の病と言うべきでしょうか。頭は体の一部なのです。

事例2

この男性の症状は、説明し難い不安感に襲われることと、早朝覚醒に悩まされることでした。病院で検診してもらっても内科的な異常は発見されません。内科的に異常がない場合は、どこに行くのでしょう。通常は精神神経科です。しかしこの男性は精神科医でした。そんな問題ではないと思ったこの男性は、たまたま自分で異常の原因を見つけることができました。低血糖症だったのです。低血糖症という題名の本を書いた人が、副題に「医者が治療しない病気」とつけています。低血糖症になると、脳細胞のエネルギー源である血液のなかの糖分が低過ぎて、脳細胞が機能しなくなるのです。不安感はその結果だったのです。この場合、不安感はこころの病だったのでしょうか。それとも体の病だったのでしょうか。(注:ケトン体をエネルギーにするケトン代謝もあ ることが判明したので、血糖値が低くてもケトンエンルギーが使えれば症状を抑制することは可能。参考書籍:『ケトン体が人類を救う』宗田哲男著)

事例3

うつ病と診断されている男性がいました。検診の結果梅毒にかかっていることが判明しました。この男性の場合は血清検査に出て来ないセロネガティブな梅毒だったのです。この男性はこころの病にかかっていたというべきでしょうか。それとも体の病にかかっていたと言うべきでしょうか。知らずに感染症にかかっていて、うつ病と診断されている人は少なくないと、精神科医ウォーカー医師が言っています。(『狂気と正気のさじ加減』共立出版、1999)感染症から来ているうつ病は、体の病と言うべきでしょうか。それともこころの病なのでしょうか。頭が体の一部であることを決して忘れてはなりません。


事例4

一歳半で自閉症と診断された男の子がいました。母親は自閉症が何かも分からないところから、調査に調査を重ね、やがて乳製品に含まれているカゼインと小麦に含まれているグルテンを、子どもの食べ物から徹底的に除去することにしました。今ではこうしたことに科学的な裏づけがあることが分かっています。その子は今10代に成長し、完治と宣言されています。学校の教科によっては1学年進んでいる優秀な子どもになっているのです。今この領域で科学的な研究が多くの人によって続けられていますが、カゼインやグルテンを分解する酵素を持っていない子どもの体の中で、アヘンに似た物質が造られ、それが体を巡るので、異常な行動が現れるということが指摘されています。アヘンに似た麻薬物質が体を巡っている人は、こころの病にかかっているのでしょうか。それとも体の病と言うべきでしょうか。

こころと体を切り離さない


これまでの事例は、体がこころに異常をもたらしていることを例証しています。内科的に原因が見つからない場合でも、安易に精神科領域だと見なさないことです。昔梅毒のことが分からない時代には、梅毒は狂気をもたらす怖いこころの病と思われていました。しかし、抗生物質で治療できる感染症であることか分かると、精神科領域からはずされるようになりました。ペラグラがビタミンB3(ナイアシン)欠損で起こることが分からない時代には、ペラグラ患者が精神病院に入院していた時代がありました。今ではペラグラという名前すらあまり聞かなくなりました。内科的な問題であるのに、精神科にまわされるケースが少なくないということです。

向精神薬の問題


風邪を引いたら風邪薬、眠られなくなれば睡眠薬、落ち込めば抗うつ剤、不安になれば精神安定剤。お決まりの処方のようですが、こころの病にすぐに向精神薬を処方するという考えにクレイムをつけている人がいます。薬をまったく使わないように言っているのではありませんが、今の社会はあまりにも安易な流れができています。米国のピーター・ブレギン博士はADHDと診断された500万人もの子どもたちにリタリンが処方されていることに異議を唱えています。そして製薬会社を訴えて裁判で争っています。ブレギン博士の主張は、向精神薬は少量でも短期間でもすべて前頭葉に作用し、場合によっては取り返しのつかない損傷を与える可能性があるというものです。だからと言って薬は急に止めてはいけません。必ず医師の指導の下で行なうことです。ブレギン博士は多剤投与の場合は、一剤からはじめて7日から10日かけて10パーセント減量する方法を推奨しています。たとえば10ミリのものなら9ミリを7日〜10日飲み、次に8ミリにして7日〜10日飲み続けるという方法です。一剤が終わったら次に二剤目も同様にするというやり方です。リバウンドを防ぐ賢明な方法でしょう。昔不登校が比較的まれであった頃、不登校の子どもを精神科に連れて行き、薬物療法をしてもらっていたことがありました。今では不登校は13万人とも14万人とも言われる時代なので、精神科で薬物療法をしてもらうことは少なくなったと思いますが、いったん薬物療法が始まると離脱が困難になります。「ヤク(薬)には手を出すな」という標語は、麻薬、覚醒剤だけでなくこころの病と言われるものにもあてはめるべきでしょう。

変えられないものと、変えられるものとの区別


聖書は「心配するのをやめなさい」(マタイ6:25〜34)と教えています。通常の計画を止めるということではなく、何の結果ももたらさない思い煩いを指しています。炊飯器を夜セットすることを忘れてはいけないと心配する程度のことではありません。自分で変えられないものを変えようとすることをやめるように言われているのです。ギリシャ語の思い煩うということばには、心を二分するという意味があります。この思い煩いが引き金となって体のホルモンに変化が起こります。アドレナリンがたくさん放出されます。このアドレナリンが酸化してアドレノクロムという物質に変化し、LSDと似たような物質になるという説があります。これがこころの病を引き起こしているとしたらどうでしょう。聖書が「あなたがたの思い煩いを、いっさい神にゆだねなさい」(ペテロT、5:7)と言っていることに大きな意味があることになります。自分で変えられない「思い煩いというボール」をいつまでも持っていないで、神に投げ返すことが求められているのです。バスケットボールの試合では、パスされたボールはすぐに手放さなければなりません。思い煩いというボールを自分で持ち続けることはルール違反なのです。思い煩いのボールはいつでも、神によろしくと投げ返すことです。相手がどう思うだろうかと、あれこれ考えていることがあります。しかし、これは相手が決めることです。自分がどのように心配してもそれは自分では変えられません。自分がしたこと、言ったことに対して、相手がどう思うだろうかと、いくら寝ないで考えてもどうにもなりません。自分が考える内容は変えられますが、人が考える内容は変えられません。
過去にしたことについて悔やむ人がいます。ああすればよかった、こうすればよかったと、悩み続けるタイプです。子育てを振り返って、もし子どもに対してあのような態度で接しなかったら、今とは状況が違っていたのに、と考えるようなケースです。このような人は変えられない過去を変えようとしているのです。こんなこころの状態が長く続くと、体の健康を維持するのも困難になります。頭は体の一部なのです。影響を受けないはずがありません。体がこころに影響を与え、こころも体に影響を与えます。どちらか一方だけを強調するのは間違いです。「愛する者よ。あなたが、たましいに幸いを得ているようにすべての点でも幸いを得、また健康であるように祈ります。」(ヨハネV2)


(本稿は『恵みの雨』2003年5月に収録されたものに若干の変更を加えて掲載しています。)


プロフィール
立正大学心理学部教授。臨床心理士。精神保健福祉士。日本カウンセリング学会認定カウンセラー。日本でのカウンセリング歴25年。研究領域は、選択理論、現実療法、精神栄養学、クオリティ・スクール、神学など。精神障害者のためのグループホームでの実践歴20年。著書『しあわせな夫婦になるために』、訳書『ハッピー・ティーンエイジャー』他多数。

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