グラッサーからの書簡(2006年)

統合失調症の男性患者が肺炎を患い高熱を出して、内科病棟に移された。肺炎の治療を終えて精神科病棟に戻ってしばらくしてから、内科病棟では何らの精神科症状も出なかったのに精神科病棟に戻って来たら、また「背中に猿がいる」と症状を訴えた。これを知って、私はグラッサーに手紙を書いた。その患者はアラキドン酸不足であったが、高熱を出したときに不足していたアラキドン酸が出て来て症状が消えたのではないか?以下がグラッサーの返事である。
「アラキドン酸については何も言えない。それはとても重要なものかもしれないが、私はその名前を聞いたこともない。その患者は肺炎という大変な病気になって高熱を出して、内科病棟では正常だった。私が受け入れる精神病は、神経科医が脳に異変があるとするもので、DSM-IVにリストされている精神病には、脳に器質異常が見られないので除外される。私は、精神科医が診断する統合失調症を精神病であると教えていない。あなたが指摘するように、アラキドン酸が関与してその患者は正常になった可能性がある。しかしこれは脳に問題があったということにはならない。私は50年前にその患者に出会ったのだが、もっと技術に長けていたら効果的な対処ができたと思う。その患者はとても孤独な人だった。この孤独から幻覚が出るようになった。関わる人がいなくて、基本的欲求が満たされない状態で、創造的になった。創造性は選択理論の4番目の要素だ。彼が肺炎だったので、内科の医療関係者が彼のお世話をしっかりした。そのお陰で彼は快復した。私はそのとき、これをしっかり理解していなかった。今なら、彼と温かい人間関係を確立できたと思う。ハリントン医師のもとで共に働いたとき、このような患者と友好的な関係を築き、私の関わりは成功していた。こうした人々が基本的欲求を満たす方法を学べば、創造的にならずにすみ、精神病と呼ばれなくなる。『メンタルヘルスー心の健康の保ち方―』を最近25,000冊印刷したので、欲しかったらリンダに連絡されたい。人が基本的欲求を満たすことができるようになれば、メンタルヘルスは改善する。これを日本でもしっかり教えて欲しい。あなたの指摘したようにアラキドン酸が患者の正常になる助けになったという考えを楽しく読ませてもらった。間違っているとは言えない。私は精神疾患を持つ人に選択理論を学んでもらって成果を上げている。手紙をありがとう。 Bill Glasser, M.D.」(原文は要約されている。)。

柿谷正期(日本選択理論心理学会会長)
JACTP News Letter #87

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